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研究指導の進め方

当研究室では、原則として下記のステップで研究指導を進めていきます。

1.解決したい臨床上の課題(クリニカルクエスチョン)の焦点化

研究の出発点となる臨床上の課題を明確にし、大学院課程で取り組みたい課題の焦点化を行います。

2.明らかになっていない研究課題の明確化(先行研究の検索)

文献調査を通じて既存の研究成果を把握し、未解決の研究課題を特定していきます。

3.大学院で取り組む研究課題の決定

大学院で取り組む研究課題を決定し、構造化した研究仮説(リサーチクエスチョン)を作成します。

4.予備実験・予備調査の実施

本格的な研究を始める前に小規模な実験や調査を行い、研究方法の妥当性を確認するとととに、計画した研究が学修期限内に終了可能か検討していきます。

5.研究計画の策定

詳細な研究計画を作成し、倫理審査の受審や臨床試験登録(UMIN-CTR等)を行っていきます。

6.データ収集(実験・調査)の実施

承認された研究計画に基づいて、本格的にデータ収集を行なっていきます。

7.データ解析

収集したデータを分析し、仮説に対してどのような主張が可能な結果が得られたかを確認していきます。

8.成果発表(論文の執筆・投稿, 学会発表)

研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿したり、学会で発表したりします。

9.学位論文の執筆

これまでの研究成果を総合し、学位取得のための論文を作成します。

論文の読み方

論文の読み方

論文を読むことは、研究分野に関連した最新の知見が得られるだけでなく、批判的思考能力の向上や研究手法についての理解を深めるためにも有用ですが、そのためには適切なフレームワークに沿って論文を読む習慣を身につけることが求められます。特に、研究に取り組み始めたばかりの学生については、研究テーマの発見や絞り込みのためにも戦略的に文献を読み込み、研究方法を理解するための知識基盤を構築していくことをお勧めしています。

1.論文の検索

論文の作成法を身につけるには、常日頃からCritical Readingの観点で多くの論文を読んで、その論文の設定された研究仮説・研究方法・考察・結論の妥当性などを判断できるようにならなければなりません。論文はPubMedGoogle Scholarなどの論文データベースを利用して検索します。まずは、Abstractを読み、関心のある論文を見つけていきましょう。

2.論文の整理

自身の研究に関連した論文の整理には文献管理ツールを利用します。文献管理ツールは、PubMedやGoogle Scholarなどのデータベースからワンクリックで保存でき、論文作成時にも簡単に文献リストが作成できるようになります。ただし、簡単に論文を保管できるため、メタデータを利用して適切に整理しておかないと、必要時に見つけることが困難になるため注意が必要です。有料にはなりますが、私はPaperpileを利用して文献を管理しています。

3.研究テーマ

看護・健康科学といった学術分野の研究は、基本的に実社会に存在する健康課題等を解決するために実施されます。しかし、このような社会課題をクリニカル・クエスチョンといい、このままでは研究をすすめることができないため、検証可能なリサーチ・クエスチョンに置き換えてから研究を進めることが求められます。ただし、通常は1つのクリニカル・クエスチョンに対する答えを得るには、健康課題を探索する研究, 健康課題の原因や関連要因を検討する研究, 提案したソリューションの有効性を確認する研究, 実社会で利用可能性を検証する研究など複数の研究が必要になるため、その論文の研究テーマを明確にしたうえで論文を読んでいくことが重要になります。

4.研究課題

論文は、Introduction(緒言)Methods(方法) Results(結果)Discussion(考察)構成されており、研究課題はIntroductionに記述されます。Introductionは①社会課題の提示, ②既存研究から得られた知見, ③未解明の課題, ④研究で解明を目指す研究仮説という流れで記述されることが多いため、読む際もこの流れを意識して読むようにしてください。

5.研究デザイン

研究デザインは、その研究がどのような方法論に基づいて実施されたかを示す研究の核心をなすものであり、研究デザインを理解することは、論文の結果の信頼性と有効性を評価する上で不可欠です。また、研究デザイン毎に論文の報告ガイドラインが策定されているので、報告項目についても確認しておきましょう。報告ガイドラインはEQUATOR Networkにまとめられているので、報告内容の妥当性を検証するためにも、予め確認しておきましょう。

6.研究手法/研究結果

研究対象者の選択、サンプルサイズ、データの取得方法、統計解析などが適切に実施されていないと、研究を通して得られたデータの信頼性は担保できなくなります。また、研究結果を提示する手段(図や表)が不適切な場合にも妥当な結論を導くことができなくなります。統計手法等の理解には体系的な学習が必要になるので、参考になる書籍を手に入れるようにしておきましょう。

7.考察/結論

論文の考察セクションは、①研究結果の要約、②研究結果の解釈、③研究の限界点と今後の展望、④結論などで構成されます。このセクションでは、論証モデルの構成要素である主張(Claim)、根拠(Data)、論拠(Warrant)を用いて、結論とその結論に至った理由を示します。主張(Claim)は研究者が伝えたい中心的なメッセージであり、その主張を支持するデータや分析結果が根拠(Data)として提供されます。加えて、既存の研究結果や理論が論拠(Warrant)となり、これらの論拠と根拠を基にして、主張を裏付ける理由を構築します。主要な発見だけでなく、副次的な発見についても意味を探り、最終的な結論に到達します。考察では、得られたデータを適正に評価し、先行研究と公正に比較することが極めて重要になります。